迷走局

JFEスチール工場見学 扇島に降り立つ

公開:2014/03/30
更新:2020/02/15
訪問:2014/03/25
タグ: 探索

扇島(川崎市:おおぎしま 横浜市:おうぎしま)にあるJFEスチール 東日本製鉄所 京浜地区の「春休み工場見学会」に参加してきました。

扇島は、川崎・横浜市にまたがる約550万平方メートルの人工島です。 かつて川崎工業地帯に散在していた日本鋼管京浜製造所の工場群。 この生産性の向上や公害対策を図るため、1969年(昭和44年)に扇島計画が発足され、1974年(昭和49年)には埋め立てが完了し、1976年(昭和51年)11月には現在の製鉄所が稼働し始めました。 全域が私有地のため、関係者以外は許可無く入る事ができません。

また、JFE構内は基本的に撮影禁止です。 (おそらく改正SOLAS条約のため) カメラを持っていても使う機会は無いでしょう……

写真が限られているので、今回のレポートはGoogle Mapやイラストで補完したいと思います。

見学会に出発

3月25日13:30集合の部に参加しました。川崎駅付近の集合場所にJFEスチールのバスが到着していました。

JFEスチール

平日ということもあり、定員30名に対して希望者は21名。 子供は3名ほどで、私を除いた残りは60代以上の高齢者が占めていました。

川崎駅からバスで20分。全部で3つある門の内の一つ、JFE扇島正門に到着しました。 ここからJFE敷地内となり、撮影することができません。

JFE扇島正門を通過するとすぐに、JFE海底トンネルに入りました。

JFE海底トンネル

造りは、人工島を繋ぐトンネルとして一般的な四角い沈埋トンネルでした。 一応2車線となっていますが、海底では道路幅が狭くなっており、大型車の場合は1車線として中央を走ることになっています。 最も深い所で、海底21m下にあるということです。 上下線別のトンネルが平行に走っており、双方とも出口側上部がスリット状に開いていました。

トンネルを出ると、いったん東扇島に上陸となります。 その後、扇島大橋を渡ると扇島になります。

アメニティホール到着

扇島に入ってから3分ほどで、アメニティホールに到着しました。 この施設は、このような見学会や会議などに利用されているそうです。 JFE敷地内で撮影が可能なのは、この建物内だけです。

JFEスチール

150人は入りそうな広い会議室で、JFEスチールの紹介や、製鉄の流れのVTRなどが上映されました。

VTRを見終わったら、安善のためヘルメットと軍手を装備して出発! 再びバスに乗り込みます。

敷地内はあまりにも広いので、車か自転車での移動となります。 そもそも車道の隣に歩道がありません!

JFEスチール見学ルート

アメニティホール(星)から、バスで見学ルート1を通り、圧延工場を徒歩で見た後、再びバスに乗り見学ルート2を通り、アメニティホールに戻るという順路をたどりました。

ぱっと見ると、混沌としたレイアウトに見えますが、西から東(右から左)に向かって処理が進む、効率的なレイアウトとなっています。

市境が島の中央東寄りにあり、西(左)側が横浜市。東(右)側が川崎市となっています。

なお、敷地内に走っている首都高速湾岸線の土地は無償提供しているそうです。

東岸壁と原料ヤード

東の岸壁は、原料岸壁として、原料を運ぶ船から荷物を降ろすために利用されています。 3つのバースが設定されており、船の大きさによって使い分けているようです。 ベルトコンベアが装備されている、アンローダークレーンを利用して、効率的に積み荷を降ろす事ができます。 船から降ろされた原料は、原料ヤードに蓄えられます。

構内の屋外ベルトコンベアは、全てカバーがついており、粉塵が飛ばないような配慮がされています。 また、ヤードにある原料は風で飛ばされないよう、スプリンクラーで糊を散らして表面を固めているそうです。

赤焦げが鉄鉱石で、黒いのが石炭、そして白が石灰石です。

このヤードには45日船が入らなくても操業できる量を蓄えているそうです。

高炉

扇島には、高さ105mの大きい高炉が2基あります。 上部から、鉄鉱石を焼結炉で焼いた焼結鉱と、石炭を蒸して生成したコークス、そして石灰石を投下すると。 熱による反応によって、炉の底部に高温液体状の銑鉄とスラグが出来上がります。

今回は、第2高炉をバスの中から見学しました。 高炉に使われているの"カーボンれんが"は一度でも冷めると使い物にならなくなるため、4組3交替制を延べ8000人で回しているそうです。

高炉

4つある出口の一番右側に、銑鉄を製鋼工場に送に運ぶディーゼル機関車がいました。 銑鉄を運ぶ容器は"マグネシア質耐火れんが"でできており、高温の溶けた鉄に耐える事ができます。

線路の総延長は18kmもの長さを誇ります。 機関車は8台所属しており、1台につき1人で動かしているそうです。

軌間は1675mm(広軌)と、聞いた事が無いものが採用されています。 サンフランシスコのBARTが1676mmなので、非常に近いです。 JR在来線が1067mm(狭軌) 新幹線や京浜急行が1435mm(標準軌)なので、それと比べると非常に大きく感じます。 300tの銑鉄を運ぶため、このような軌間になっているそうです。

紅白ガスホルダー

島内に3つある紅白の円柱は、可燃ガスを保管するガスホルダーです。

ガスを格納する容器と言えば、球状の容器を想像しますが、このガスホルダー内のガスはあまり高圧ではないため、上から重力によって蓋をしているそうです。

圧延工場

市境を跨ぎ、横浜市へ入ります。川崎市は赤焦げ色の建物だったのに対して、横浜市側の建物は緑色で塗装されていました。

バスを降りて、圧延工場内に入っていきます。 なぜか放射線管理区域標識が設置されていました。

圧延工場

ここでは、4時間かけて1200℃まで加熱した厚板を1cmほどの厚さに伸ばす行程を見学できました。

熱した鉄がローラーにより移動される度に、鉄同士の衝突音が大きく響きます。 また、圧延機が厚板の表面を洗浄するために出す高圧蒸気の量が半端無く多いので迫力満点です。 蒸気は、酸化した不純物を洗い流し、表面を滑るように流れていきます。

非常に広いこの工場ですが、自動化されているため通常は3人で管理しているそうです。

製品運搬

完成した製品は、トラックや船により運搬されます。

西側岸壁は、製品を運輸するための船着き場として利用されています。 比率としては、トラックが55%で、残りは船だそうです。

ここから大黒ふ頭方面に見える"鶴見つばさ橋"には、この製鉄所で造った鉄が4万トンほど使われているそうです。 鶴見つばさ橋 2012-12-09 07:05撮影 奥に見えるのがJFE製鉄所

ほかにも、スカイツリーのアンテナや柱部分にここで作った鉄を利用しているそうです。

最後に

製鉄に関する簡単な知識はありましたが、実際に工場を見学して理解を深める事ができました。また、圧延の行程は、想像以上の迫力があり興奮しました。 テーマパークではないため、説明や案内に不慣れな感じは受けましたが、質問には丁寧に答えてくれました。 扇島は、通常は立ち入る事ができないので、このような機会を設けていただいたJFEスチール株式会社には、この場で感謝申し上げます。 ありがとうございました。

水江町駅付近で、神奈川臨海鉄道のDD60形ディーゼル車が動いているのに出くわしました。

JFEスチール