迷走局

怪しい秘湯、星山温泉で入浴。

公開:2015/08/28
更新:2020/02/15
訪問:2015/08/23
タグ: 探索 温泉 廃墟

神奈川県三浦郡葉山町。 葉山御用邸が存在し、避暑・海水浴など観光かつハイソなイメージが強いですが、この町にはとんでもなく怪しい秘湯がありました。

その温泉の名は星山温泉

星山温泉

稲龍神山スポーツランドに向かう

その温泉は、かつてジップラインなどのアクティビティテーマパークとして栄えた稲龍神山(いりゅうしんざん)スポーツランド内にあります。

はじめに、逗子駅に向かいました。

星山温泉

逗子駅1番バス乗り場より、逗15系統に乗り込みます。 バスは1時間に2本ほどあり、交通の便はさほど悪くありません。

星山温泉

15分ほどバスに乗り、水源地入り口バス停を降りました。近くの信号機の写真正面に見える道路を進みます。

星山温泉

道なりに歩くと、この分岐路にたどり着きます。 徒歩の場合は、そのまま直進する高低差の少ないルート(写真右側、地図のルートがこちら)がオススメ。 左の道(写真中央)のルートは高低差がある上、迷いやすいので、車で行く場合を除き推奨できません。

星山温泉

さらに進むと稲荷神社と、稲龍神山スポーツランドの倉庫・看板が見えてきます。

星山温泉

スポーツランドの看板は時代を感じさせられます。一応、星山温泉の看板もありますが、営業しているようには見えません。 創業者の新倉 国二朗氏の苗字は、この地域から始まった苗字で武将の源頼朝から姓を賜ったと伝えられているそうです。

星山温泉

さらに進むと、「YKK AP」と「タカラ」の看板が見えてきます。 このまま「タカラ」の手前から伸びている道を突き進みます。

星山温泉

別の角度から。 この先は林道ですが、バイク程度であれば、押して歩ける程度には整備されています。

星山温泉

曲がりくねった道を進むと、やがて稲龍神山スポーツランド管理棟が見えてきました。 管理棟とはいえ普通の民家。建物奥を右に曲がり進みます。

稲龍神山スポーツランド入り口 (再生開始時方面が温泉方面です) この建物と場所を確認しておけば、迷うことも無いでしょう。

星山温泉

入り口を抜けると、管理棟からリレーの音が。 赤外線センサーで入場者を検知して信号が灯るようになっていました。

星山温泉

さらに舗装されていない道を進んでいきます。

星山温泉

林道を抜け、すこし開けた場所へ出ました。 星山温泉に到着です。

星山温泉に入浴

星山温泉 広場

すでに温泉の広場には、管理人さんの人影が。

星山温泉

管理棟には人が居ないし、本当に営業しているのか不安でしたが、杞憂でした。

星山温泉

入湯料は500円。45分貸切となります。 当日2回目以降は追加料金が400円かかるそうです。

星山温泉

そのまま管理人さんに促されるまま、温泉の浴室まで案内されました。

星山温泉

浴室全景はこんな感じ。 事前情報で、覚悟した方が良いというように言われていましたが、ボロいだけで至って清潔でした。 蚊は飛んでいましたが、他の虫は存在しないので式根島の地蛇温泉に比べれば、遥かにマシです。

星山温泉浴室パノラマ

星山温泉

絵は創業者の兄が描かれたそうです。 この絵は近くにある葉山芝崎港近辺から見た、富士山と江ノ島でしょう。 1989年に建てられた葉山灯台が描かれていないところを見ると、開業当時からあった事が伺えます。 もう一つは、赤い時計台で南武線の中野島駅を思い出しますが、果たして何処なのでしょうか……

星山温泉

脱衣室です。カゴが清潔なのが救いです。 出口に鍵はなく、浴室とはカーテンで仕切られているワイルドな仕様です。

星山温泉

当日は、常連さんが帰った直後だったため、待つことなく入浴することができました。 地下100メートルから湧き出た、ナトリウム - 炭酸水素塩・塩化物泉冷鉱泉。 源泉は16度で、そのままだと冷たいので薪で加温します。 煙が浴室内に流れ込んで、すこし咳き込みますが、そのうち落ち着きます。

星山温泉

薪で加温された状態の温度は、かなり熱いので、蛇口をひねり水を足します。 この蛇口から出るのは、加温されて無い冷鉱泉なので、薄めて追加し続けることにより、ほぼ泉源かけ流しの状態となります。 椅子・桶はもちろん、かき混ぜ棒や石鹸が用意されています。

浴槽の上部の穴から、熱いお湯が出ているので注意しないと火傷します。 もたれかかって、熱い思いをしたのはここだけの話。 この温泉の特徴は、pH9.6のアルカリである事でしょう。とにかくヌルヌルします。 石鹸で体を洗った際は洗い流した際、落ちているかが分からない状態になります。

建物のボロさからは想像できないほどの良い温泉でした。

かつてのスポーツランド跡を巡る

稲龍神山スポーツランドは、昭和中期よりフィールドアスレチックを主体としたエンターテインメント施設として稼働していました。 フィールドアスレチックは1980年代にブームを迎え、投資が少ないレジャー施設ということで各地に作られました。 その後バブルは崩壊し、フィールドアスレチックが廃っていく中、創業者はビジネスの転換のために温泉を掘ることにしました。

こうして星山温泉は1989年頃に、スポーツランドの一部として開設されました。

最盛期には、1日500人を超える人が来場したそうですが、現在は1日に人が来るか来ないかだそうです。

星山温泉

スポーツランド関連の建物も残っていますが、廃墟と化しています。 この辺り一帯がジップラインになっていたようで、現在ジップラインのロープは木の倒壊防止に利用されていました。 左にあるのは薪として利用する廃材です。 廃棄された家財を引き取り、これを燃やして温泉を沸かしています。

星山温泉

この建物には、卓球台やトランポリン・カラオケ機器などが存在したそうです。

星山温泉

日の丸の入り口。蜘蛛の巣が多数ありました。

星山温泉

奥にある祠には、稲荷神社が祭られています。 葉山町の名産品である、シイタケを作るための原木を、この山で伐採していた事もあったそうです。

星山温泉

温泉の建物と道を挟んで、反対側の建物は、客の夫婦3組により休憩室として建てられたそうだ。 湿気のため、畳がカビ臭くなってしまい、今は誰も利用していません。

星山温泉

休憩室内部は、まるで時が止まったような、まさに廃墟のような雰囲気が漂っていました。

星山温泉

2011年の雪で倒れた木によって倒壊した建築物に、スズメバチトラップが吊るされていました。 ずっとスズメバチに悩まされていたようですが、導入してからは女王蜂をうまく始末しているようで、巣を作られずに済んでいるようです。 森の中にあるため、リスやタヌキ・キツツキなどの動物などが出現することもあるということです。

星山温泉

現管理人さんは、創業者の父親の手伝い、稲龍神山スポーツランドを引き継ぎました。 話好きなようで、このために温泉を運営しているのではないかと思ったほどです。 アスレチックの設置・修理から、建物の建築・保守まで何でも行っていたそうです。 利用しているスクーターの故障もできるかぎり自分で整備しているとか。

星川温泉は、怪しげな森の中にある最高の秘湯でした。 珍スポット的な扱いですが、湯質は素晴らしいです。 ボロさを気にしなければ、薪で焚いた温泉をワンコインで独占することができる唯一無二の貸切温泉でしょう。

管理人さんは膝を痛め、来年から年金が支給されることもあり、2015年度一杯で営業を止めてしまうかもしれないということでした。 興味がある方は早めに行くことをお勧めします。また涼しくなったら訪問したいと思います。

チケット

iryushinzan_ticket.pdf

関連リンク

星山温泉(葉山町) 廃墟のような温泉 (www.arinoki.com) ありの木様

写真提供

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