神奈川県三浦郡葉山町。
葉山御用邸が存在し、避暑・海水浴などの観光のイメージが強い地域である。
そして、なぜか温泉で有名な群馬県草津町とは姉妹都市である。
しかし、葉山に温泉なんてあるのか?
あった。
とんでもなく怪しい秘湯が葉山にあった。
その温泉の名は、星山温泉。 稲龍神山スポーツランド内にあるそうだ。
はじめに、逗子駅に向かいました。
逗子駅1番バス乗り場より、逗15系統に乗り込みます。 バスは1時間に2本ほどあり、交通の便はさほど悪くありません。
15分ほどバスに乗り、水源地入り口バス停を降りました。近くの信号機の写真正面に見える道路を進みます。
道なりに歩くと、この分岐路にたどり着きます。 徒歩の場合は、そのまま直進する高低差の少ないルート(写真右側、地図のルートがこちら)がオススメ。 左の道(写真中央)のルートは高低差がある上、迷いやすいので、車で行く場合を除き推奨できません。
さらに進むと稲荷神社と、稲龍神山スポーツランドの倉庫・看板が見えてきます。
スポーツランドの看板は時代を感じさせられます。一応、星山温泉の看板もありますが、営業しているようには見えません。 創業者の新倉 国二朗 氏の苗字は、この地域から始まった苗字で武将の源頼朝から姓を賜ったと伝えられているそうです。
さらに進むと、「YKK AP」と「タカラ」の看板が見えてきます。 このまま「タカラ」の手前から伸びている道を突き進みます。
別の角度から。 この先は林道ですが、バイク程度であれば、押して歩ける程度には整備されています。
曲がりくねった道を進むと、やがて写真のような建物が見えてきます。この建物が稲龍神山スポーツランド管理棟となります。 管理棟とはいえ、普通の民家。建物奥を右に曲がり、進みます。
稲龍神山スポーツランド入り口 (再生開始時方面が温泉方面です)
この建物と場所を確認しておけば、迷うことも無いでしょう。
入り口を抜けると、管理棟からリレーの音が。 赤外線センサーで入場者を検知して信号が灯るようになっていました。
さらに舗装されていない道を進んでいきます。
林道を抜け、すこし開けた場所へ出ました。 星山温泉に到着です。
星山温泉 広場
すでに温泉の広場には、管理人さんの人影が。
管理棟には人が居ないし、本当に営業しているのか不安でしたが、杞憂でした。
入湯料は500円。45分貸切となります。 当日2回目以降は追加料金が400円かかるそうです。
そのまま管理にさんに促されるまま、温泉の浴室まで案内されました。
浴室全景はこんな感じ。 事前情報で、覚悟した方が良いというように言われていましたが、ボロいだけで至って清潔でした。 蚊は飛んでいましたが、他の虫は存在しないので式根島の地蛇温泉に比べれば、遥かにマシです。
星山温泉浴室パノラマ
絵は創業者の兄が描かれたそうです。 この絵は近くにある葉山芝崎港近辺から見た、富士山と江ノ島でしょう。 平成元年に建てられた葉山灯台が描かれていないところを見ると、開業当時からあった事が伺えます。 もう一つは、赤い時計台で南武線の中野島駅を思い出しますが、果たして何処なのでしょうか……
脱衣室です。カゴが清潔なのが救いです。 出口に鍵はなく、浴室とはカーテンで仕切られているワイルドな仕様です。
当日は、常連さんが帰った直後だったため、待つことなく入浴することができました。 地下100メートルから湧き出た、ナトリウム - 炭酸水素塩・塩化物泉冷鉱泉。 源泉は16度で、そのままだと冷たいので薪で加温します。 煙が浴室内に流れ込んで、すこし咳き込みますが、そのうち落ち着きます。
薪で加温された状態の温度は、かなり熱いので、蛇口をひねり水を足します。 この蛇口から出るのは、加温されて無い冷鉱泉なので、薄めて追加し続けることにより、ほぼ泉源かけ流しの状態となります。 椅子・桶はもちろん、かき混ぜ棒や石鹸が用意されています。
浴槽の上部の穴から、熱いお湯が出ているので注意しないと火傷します。 もたれかかって、熱い思いをしたのはここだけの話。 この温泉の特徴は、pH9.6のアルカリである事でしょう。とにかくヌルヌルします。 石鹸で体を洗った際は洗い流した際、落ちているかが分からない状態になります。
建物のボロさからは想像できないほどの良い温泉でした。
稲龍神山スポーツランドは、昭和中期よりフィールドアスレチックを主体としたエンターテインメント施設として稼働していました。 フィールドアスレチックは1980年代にブームを迎え、投資が少ないレジャー施設ということで各地に作られました。 その後バブルは崩壊し、フィールドアスレチックが廃っていく中、創業者はビジネスの転換のために温泉を掘ることにしました。
こうして、星山温泉は平成元年後期に、スポーツランドの一部として開設されました。
最盛期には、1日500人を超える人が来場したそうですが、現在は1日に人が来るか来ないかだそうです。
スポーツランド関連の建物も残っていますが、廃墟と化しています。 この辺り一帯がジップラインになっていたようで、現在ジップラインのロープは木の倒壊防止に利用されていました。 左にあるのが、廃材です。これを燃やして温泉を沸かしています。 廃材は、廃棄された家財を引き取ったものが多いようです。
この建物には、卓球台やトランポリン・カラオケ機器などが存在したそうです。
日の丸の入り口。蜘蛛の巣が多数ありました。
奥にある祠には、稲荷神社が祭られています。 葉山町の名産品である、シイタケを作るための原木を、この山で伐採していた事もあったそうです。
温泉の建物と道を挟んで、反対側の建物は、客の夫婦3組により休憩室として建てられたそうだ。 湿気のため、畳がカビ臭くなってしまい、今は誰も利用していない。
休憩室内部は、まるで時が止まったような、まさに廃墟のような雰囲気が漂っていました。
2011年の雪で倒れた木によって倒壊した建築物に、スズメバチトラップが吊るされていました。 ずっとスズメバチに悩まされていたようですが、導入してからは女王蜂をうまく始末しているようで、巣を作られずに済んでいるようです。 森の中にあるため、リスやタヌキ・キツツキなどの動物などが出現することもあるということです。
現管理人さんは、創業者の父親の手伝い、稲龍神山スポーツランドを引き継ぎました。 話好きなようで、このために温泉を運営しているのではないかと思ったほどです。 アスレチックの設置・修理から、建物の建築・保守まで何でも行っていたそうです。 利用しているスクーターの故障もできるかぎり自分で整備しているとか。
星川温泉は、怪しげな森の中にある最高の秘湯でした。 珍スポット的な扱いですが、湯質は素晴らしいです。 ボロさを気にしなければ、薪で焚いた温泉をワンコインで独占することができる唯一無二の貸切温泉でしょう。
管理人さんは膝を痛め、来年から年金が支給されることもあり、今年度一杯で営業を止めてしまうかもしれないということでした。 興味がある方は早めに行くことをお勧めします。また涼しくなったら訪問したいと思います。
稲龍神山スポーツランド 星山温泉
営業時間:午前10時から午後5時 水曜定休
電話:0468-78-8377
星山温泉(葉山町) 廃墟のような温泉 (www.arinoki.com) ありの木様
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写真提供 ありの木様
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探索日 2015_08_23
初出 2015_08_28