スチル写真の撮影がメインですが、最近は動画を撮ることも多いです。 新しい表現を行うため、以前から気になっていた、カメラスライダーの導入を考え始めました。
EOS 5D Mk2を問題なく載せることができ、最も安く評価が良いカメラスライダーとしてKonova社製K2という製品があります。 ベアリングと金属レールで作られており、重さも1.4kgで持ち運びも良さそうです。安いとは言え2.5万円ほどします。
そこで、もっと安くて丈夫なやつはないかと探したところ、自作されている方の動画が見つかりました。 作り方は様々で、レールを金属パイプで作ったり、IKEAの商品を組み合わせて激安で仕上げているものもありました。 中でも目にとまったのがこちらの動画です。
これらの自作カメラスライダーは、プルトンチェン ローラーパックという製品を使い、重要となるレールの製作の問題を解決していました。
カメラスライダーは、レールの滑らかさが重要です。これを自作するもは骨が折れる作業ですが、世の中には便利な商品があるものです。 それがプルトンチェン株式会社のローラーパック。 構造的には、Konova K2と同様のベアリング3点保持方式のローラとレールがセットになった産業用パーツです。 上記の動画だと、R25が利用されていますが、カメラの重さと、レールの剛性を考R40型にしました。 R40型の方がガタつきが少ないようです。
プルトンチェン ローラーパック製品情報 http://www.pulton.co.jp/roller.php
購入はインターネットホームセンターIHC.MonotaRO http://ihc.monotaro.com/p/179518/から注文しました。
持ち運びを考え、持っている三脚と同じ長さの、全長70cm R30-700L を購入しました。レールの稼働有効長が60cmなので、ちょうど期待していた長さとなりました。4849円
到着時は、グリスが大量に塗られていたので、一度脱脂してから、レールとベアリングにグリスを塗りました。 ノングリスでも問題無いようですが、リチウム系のグリスを薄く塗っています。 ここで誤算だったのが、思っていたよりも動かすのにトルクが必要でした。
雲台や三脚との接続部分は、MDFボードで製作しようと思いましたが、力が掛かる箇所なので、アルミニウムで台座を作ることにしました。 ボール盤などを貸し出している所で借りようとしましたが、レンタル料が高く、ドリルビットの持ち込みが必要だったりするので、加工業者に頼むことを視野に入れ、製図を行い見積もりを出すことにしました。
高校生の時に、7000番(超超ジュラルミン)の板を数時間かけて弓のこで切った記憶が蘇る……
早速、雲台を固定する台と、三脚を接続する台を設計・製図することにしました。 製図に関して、以前はJw_cadを使っていましたが、Windows環境が無いのでIllustratorで書きました。 適当製図ですが、見積もりに出した会社からツッコミはありませんでした。
注意事項
・図面と実際に頼んだ物は若干異なります。(ねじサイズ・ねじ切り箇所など)
・必要に応じて、紐をつける金具設置や、一時的に固定するためのタップを入れると良いかもしれません。
・材質はアルミニウムA5052 A3003を想定しています。
複数の会社に加工の見積もりを出してみました。 いずれの会社もメールでの問い合わせましたが、全ての会社から2時間以内に返答が来る気合の入り方に驚きました。
A社 B社
約15000円 納期1ヶ月・3週間 一部加工無し
アルミプラス 小池製作所 http://www.al-plus.jp/
7058円 納期2週間 図面通り
いずれも送料込み・表面加工なしです。 アルミプラスのみ納期が早い上に他社の半額以下でした。 この価格なら自分で加工するより、綺麗でコストが安いので、アルミプラスに発注する事に決定しました。 R加工は自分でやったら、荒いヤスリで削る加工になりそうですし、そもそも都合が良い素材が手に入りません。 フライス盤様様ですね。
注文から丁度二週間後、納期通りに到着しました。 期待通りの仕上がりで満足です。 今回発注したパーツは、形状・サイズ共に仕上げがしやすいものだったようで、最終的な仕上げも機械加工で行ってくれたようです。
削ったアルミは錆びます。また、削り出しのアルミは割と傷がつきやすいです。 そこで、表面の処理を行うわけですが、簡単にラッカーで塗装する方法では剥げやすく、外に持ち出すことが多いので向いていません。 今回はアルミらしい表面処理である、アルマイト処理を行うことにしました。
個人でも処理できないことはありませんが、こちらも頼んだ方が結果的に安くなりそうなので、複数者に見積もりを出しました。
問題があるとすれば、気合の足りなさ。 問い合わせてから返答まで平均3営業日もかかりました。 おそらく個人相手の商売があまりないのかもしれないので仕方がないのかもしれませんが……
A社
7500円 納期 1週間
B社
5400円 納期 1週間
有限会社光アルマイト加工所 http://www.geocities.jp/alumiteya/
2000円から3500円 納期1日 こちらだけは、メールでの問い合わせができなかったのでFAXで問い合わせたところ、5分も経たず折り返しの電話で見積もり結果が返ってきました。
株式会社安藤工業所 http://www.ando-kogyo.jp/
4320円 納期3日 シルバー・黒で処理する場合は1080円ほど安くなるようです。
早い、安いの光アルマイト加工所さんで決定と言いたいところですが、安藤工業所さんは徒歩圏内にあるので、こちらに決定。
羽田の町工場地帯を進むと、首都高の高架付近に工場がありました。
当日は、工場長の方が対応してくれました。工場長の名刺もアルマイト処理がされているアルミニウム製! その後48時間で処理完了の電話が入りました。
今回はオレンジに染めてもらいました。価格は4000円。 アルミの処理が良くできており、アルマイト処理が綺麗にできたと賞賛していました。
ネジは干渉を最低限にするため全て頭が低いトラスネジにしました。
M4 12mm x4 4円 M5 8mm x2 4円 1/4-20 UNF 3/8inch x1 198円 (ただし、2本からで送料が480円……)
川崎工業地帯にあるねじ問屋で入手。 問題は雲台固定用のユニファイネジ。 ネジ問屋でも置いてなかったのでネットで注文しました。 ウィットネジでも代用できますが、長さとトラスネジの条件をつけると、入手性はさほど変わりません。
以上で、部品が揃ったので組み込みです。 ローラーパックのレール側の穴がM5ネジを通すには小さいので、リーマーで穴を広げました。
後は、ネジを締めてできあがり! 完成後、動かしてみたところ、M5ネジの頭が干渉していたので、より頭が低いネジに置き換えました。
重量は驚異の870g(雲台除く)。このクラスにしては強度を維持しつつかなりの軽量に仕上がったと思います。
大師公園「瀋秀園」にテスト撮影に行きました。機材はCanon EOS 5D Mark II + Canon EF 35mm F2.0 IS USMです。 誤ってIS無しで撮影してしまったため、FinalCutProXの手振れ補正を利用しています。
練習が足りないので滑らかに動かせていません…… 特にスピードを落とすと、動かすのにトルクが必要になり、かなり難しいです。 ローラーパックのレールがコの字のためか歪みは少なめですが、それでも左右端で数ミリ歪むので、早送りすると少し気になります。
総制作費17000円で、軽量なカメラスライダーを作ることができました。 ただ、値段や手間・操作性・持ち運びのバッグの存在・拡張性を考えると、Konova社のK2が良いと思われます。
初出 2015_12_26